20.唐人お吉
唐人お吉はアメリカの初代総領事ハリスに仕えた実在の女性ですが、一般に語られている「唐人お吉物語」は虚実が入り交じっています。
お吉の事が広く知られるようになったのは、大正時代の頃、医者で、郷土史の研究家である村松春水が、下田の同人誌「黒船」にお吉のことを載せ、それを元に多くの作家が小説を書き、さらには芝居や歌にもなりました。その過程で色々脚色があり、「唐人お吉物語」が出来上がって来たわけです。ここに同人誌「黒船」や唐人お吉の代表的な本などが展示してあります。
「お吉の物語」では、下田一の美人芸者であるお吉は、ハリスに見初められ、お国のためと説得され、恋人の鶴松と別れさせられ領事館のある玉泉寺に通うようになりました。気むずかしいハリスもお吉が気に入り、奉行所との交渉もスムーズに進むようになります。ハリスが江戸に行く時、お吉も一緒に行きました。やがてハリスはアメリカに帰りますが、残されたお吉は、外国人に仕えたことでみんなに蔑まれ、酒浸りになり、遂に稲生沢川の門栗の淵に身を沈めた、と言う憐れな物語です。なお秘書のヒュースケンにはお福が仕えました。
展示の古文書は「お吉はハリスに仕える為の支度金に25両受け取った」という覚えですし、給料は月10両の約束でした。 当時大工や石屋など一人前の職人は月2両ほどです。ハリスは給仕として15,6才の下田の少年を雇っていますが手当は月1両半です。看護婦にしてはあまりにも大金です。
物語では江戸までついて行ったことになっていますが、3日で暇を出されたことが史実です。ハリスは「お吉」の後、「さよ」と言う17才の女性を雇い、江戸では「りん」と言う18才の女性を雇っています。同じように秘書のヒュースケンも「お福」の後、「きよ」、「まつ」、「つる」と雇い、ハリスとヒュースケンに合わせて7人の若い女性が仕えています。